共同配送の仕組みを分かりやすく解説

こんにちは、中小企業診断士のトキです。

昨今、話題になっている2024年問題。そして、2024年問題を解決するためのキーワードの1つに「共同配送」があります。

この記事では、共同配送について初めての方でも分かるように、詳しく解説していきます。

この記事を読むことで、2024年問題を考えるきっかけとなり、その解決策の1つである共同配送の仕組みを理解する手助けになればと思います。

それでは、どうぞ!

目次

共同配送とは

そもそもから話しますが、配送とは、積む場所から卸す場所まで荷物を動かすことを意味します。

共同配送とは、文字通り共同、一緒に運ぶということ。トラックの荷台に、いろんな人の荷物が入っている状態。

これが共同配送です。

共同配送の反対で、単独配送というものがあります。自分の荷物だけを運ぶ、ということですね。

ただ、自分の荷物だけだと、荷台にまだまだ載せられるのにもったいない。じゃあ、近所にもっていきたい人と一緒に同じトラックに積んで運んでしまおうというのが、共同配送ですね。

タクシーの相乗りと同じ感覚です。

また電車と車をイメージしても分かりやすいと思います。車は自分だけ乗って好きな場所に行きますよね。でも、電車は行き先が駅に固定されていますが、みんなで乗っていきますよね。この違いになります。

なので、実際にトラックの共同配送でも、卸す場所の組み合わせによって、コースが決まっています。トラックが寄る場所が近いものを合わせて、コースを作り、いろんな人の荷物を載せて運ぶこと。これが共同配送です。

プロセスで見る共同配送

共同配送=いろんな人の荷物を載せて運ぶこと、として理解してもらえたかと思います。

ではプロセスごとに共同配送を見てみましょう。

トラックは、積む場所と卸す場所があります。つまり、積むときの共同配送と卸すときの共同配送の2種類があります。

積むときの共同配送

積むときにいろんな人の荷物を載せるパターンです。

上の図では、単独配送と共同配送を比較した図になります。

通常は、ある卸し場所に対して、いろんな場所から荷物が到着します。この時、それぞれの積む場所から1台ずつトラックが走ってくるイメージになります。

しかし、共同配送では、1台のトラックで複数の積む場所を回って運んでしまいます。

これにより、3台のトラックが走っていましたが、トラックの荷台スペースを有効活用して、1台のトラックで済むことになります。

卸すときの共同配送

つついて、卸すときの共同配送です。

通常は、積んだ後、荷物をお届け先1か所に卸すのですが、共同配送では、他の人の荷物も積んでいる為、複数の卸場所を順番に回って荷物を届けていきます。

こうすることで、1人の荷物よりもたくさんの荷物が集まりますので、積載率が上がります。効率的にトラックを使えている状態に近づきます。

そして、積載率が上がるとトラック台数が少なくて済みますし、運ぶ費用も安く抑えられます。

これが卸すときの共同配送です。

主催者で見る共同配送

つづいて、誰が主催して共同配送をしているかによる違いを見てましょう。

ここまでご説明した通り、共同配送とはさまざまな人の荷物を一緒に運ぶことになります。ここで、だれが「一緒に運びませんか?」と声を上げて、共同配送を実現するかによって2つパターンがあります。

運送会社主導

1つは、運送会社が主導して進めるケースです。

運送会社は、様々なお客さんから荷物を預かり、運ぶサービスをしています。

そのため、すでに様々なお客さんの荷物が手元にあります。運送会社側で、効率的に運べるようにトラックの積み合わせ、運送コースを設定すれば、共同配送することは容易です。

一般的にこの方式は、路線便と言います。バスの路線便と同じで、あらかじめコースが決まっていて、そのコース上に届け先がある人たちの荷物をまとめてトラックに積み、運んでいます。

これにより、輸送会社は効率的に荷物を運べるため、運賃を安く設定することが可能です。

荷主主導

もう1つのパターンが、荷主が主導する共同配送です。

荷主とは、荷物の所有者、つまり荷物を運んでほしい側の人たちです。

彼らが声を上げて、周りの荷主を集めて一緒に運ぶ共同配送もあります。通常は、こちらを共同配送、と呼ぶことが多い印象です。

運送会社が主導する場合と比べて、荷主主導はまだまだ実践できている事例は少ないのが現状です。なぜなら荷主主導の場合は、運送会社が主導する場合と比べて難易度が高いからです。

ハードルの1つ目は、共同配送できるパートナーの情報がないことです。運送会社であれば、仕事柄、様々な業種・業界の荷主を集めて運送しています。そのため、同じ卸し場所の荷物を集めやすい傾向にあります。一方、荷主が共同配送のパートナーを探す場合、まず誰が同じような卸し場所に荷物を運んでいるか知る必要があります。

共同配送は、近くの卸し場所に色々な人の荷物を載せて運ぶことですので、自分が運びたい場所と近い場所に運びたい人を見つけてこなければなりません。

そのような情報を荷主側が持っているケースは非常に稀です。また、同じような卸し場所に運びたい人たちはビジネス上、ライバル関係にある可能性が高いです。そのようなパートナーと同じ車で運ぶ、つまり運ぶことにおいて差別化できないことが、荷主主導の共同配送を難しいものにしています。

ハードルの2つ目は、

共同配送のメリット・デメリット

ここまで共同配送のパターンを見てきましたが、メリット・デメリットをまとめてみましょう。

メリット

一番のメリットはトラックの積載率が上がり、効率的なトラック運用ができるようになることです。

そうすることで、少ないトラックで運ぶことができ、運賃も安くなります。

また少ないトラックで運ぶことができるということは、少ないドライバーで運べるということです。2024年問題によりドライバーの残業上限が設定され、トラック業界は人手不足状態にあります。

そのようななか、少ないドライバーで運ぶことができる共同配送は、重要な施策の1つになります。

デメリット

共同配送のデメリットは、想定していたコストメリットが出ないケースがあることです。

例えば、同じ卸し場所ということで、共同配送を行うことになった場合、まずは同じ場所に荷物を集める必要があります。その時、わざわざ卸し場所に遠回りするような場所に集めなければいけない場合、当初より割高になってしまう場合があります。

共同配送だから無条件でコストが安くなるわけではありませんので、その点は注意する必要があります。

成功事例

ここからはいくつか、これまで共同配送の取組における成功事例をご紹介しましょう。

日本通運社

パソコン周辺機器メーカー2社は物流センターを統合し、納品先が同じであることを活かして配送ルートを最適化しました。また、共同で車両を利用し、積載効率を向上させることで物流コスト削減を実現しました。この取り組みにより、短期的には運賃削減とCO2削減を達成し、中長期的には更なるコスト削減と物流センターの効率化が期待されています。

https://www.nx-soken.co.jp/consulting/case-11

F-LINE社

食品メーカー6社(カゴメ株式会社、日清オイリオグループ株式会社、日清フーズ株式会社、ハウス食品グループ本社株式会社、株式会社Mizkan、味の素株式会社)は、食品関連のSCM効率化を目的に食品物流効率化プロジェクト「F-LINE」を2015年に立ち上げました。

1社単独では物量が纏まりにくく、配送範囲が広い北海道において常温品の共同配送を実施。物流センターの集約(4ヵ所→2ヵ所)、配送トラックの大型化(4t車→10t車主体)、受注データ締め時間・納品伝票(F-LINE伝票)の統一、共配ルール・納品手順の共有化及び納品時間の統一等を行ったことにより、荷受け作業負担が低減したことに加えて、輸送効率が改善し車両台数が削減されました。

成功の秘訣

共同物流を成功させるための3つのポイントとして、「サービスレベルの見直し」「標準化」「IT化」が挙げられます。

共同物流の効果を最大限に引き出すには、物流の非効率化につながるサービスレベルや商慣行・納品条件を見直す必要があります。 具体的には、荷主企業側の譲歩と交渉力強化を通じて、受注データ締め時間や納品時間の統一、納品リードタイムの延長、納品方法の見直しなどを図るべきです。

また、共同物流を行う各社の梱包仕様が異なる場合は、積載率の低下や作業効率の悪化につながるため、梱包やパレットなどの物流資材の仕様、帳票の仕様、データ項目などを標準化する必要があります。

さらに、ITを活用したマッチングシステムなどを導入することで、共同物流の基盤を構築し、帰り荷の確保だけでなく、中長期的な視点に立った業種を超えた共同物流を推進しやすくなるでしょう。

このような変革を行うことで、共同配送の実現、そこから物流コストの削減や物流の効率化を実現できます。

まとめ

このように、共同配送を利用することで、積載率を向上させ、少ないトラック台数で効率的に輸送が可能です。

これにより、2024年問題で制限された残業時間の範囲内で、必要な物流を行うことができるようになります。そのため、共同配送は2024年問題を解決するための1つのテーマになっています。

また今回は共同配送の仕組みや成功事例をご紹介しましたが、これらはまだまだ浸透しているとは言えません。引き続き企業間で連携して、積載率を高める働きが必要になると思います。

今回の記事で、共同配送とは何かについて、イメージが沸いたのではないでしょうか。

それでは、また次の記事で!

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